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side.千夏
「ここが、千夏の部屋」
そういって、ゆうじはドアをあけた。
さっきまでいたところより、もっと広いお部屋だった。
ふかふかのベッドがあって。
たくさんのほんが、あって。
ふわ、と風がふいていて。
ただ、何かが足りない。
ぼくは、それにきづいてしまった。
「千夏……?」
あぁ、やっぱり。
ぼくは、いらないこだった。
「どうして泣いてるの、」
ゆうじと、いっしょに、過ごした。
そんな毎日は、もうおわり。
だってここは、『ぼくのへや』。
ぼくだけの、へや。
「ぼ、く、いらな、い……っ?」
ベッドは、一つだけ。
二つあったベッドは、一つに。
ゆうじはとなりで、眠ってくれない。
ぼくは、一人になってしまった。
「や、やぁ、いいこにする、だからっ……」
「どうしたの、いらなくないよ」
「だっ……ひとり、知ってるっ……ぼく、いいこじゃな、だから」
ゆうじが目の前にすわって、ぼくを見上げていた。
うでをのばして涙をぬぐってくれるけれど、ぼくは、ずっと泣いていた。
ゆうじは困った顔をしている。
そうさせてるのは、ぼく。
「いっしょ……いった、のに」
「千夏……?」
あれは、わな、だった。
ぼくを、ここにつれてこさせるための。
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