3
 

「はぅ、う……」



額に汗が浮いていた。
必死に、千夏は震える足を動かした。
俺は隣で、崩れそうな身体を支えてあげるしかなくて。

ようやく扉にたどり着いて、それをあけた。
奥は誰もいない廊下になっていて、千夏の身体がふらりと揺れたのがわかった。



「っと、平気?気分悪くない?」
「こ、わっ……かった……っ」



抱き止めると、千夏がぎゅうっと抱きついてきた。
胸にしがみつかれたまま、小さな頭をそっと撫でた。



「うん、頑張ったね。いいこ」
「いっしょ、いる、の」
「うん」



舌っ足らずなその声は、俺を必要としてくれる。

それからも、ゆっくりと歩いた。
廊下を抜けたら病院の裏側になっていて、そこから家の裏口に入ることが出来る。
人はいないけれど、新しい場所に行くこと自体に、千夏はびくびくしっぱなしだった。



「ここ。俺の家」
「いえ、」
「そう。千夏の家でもあるね」
「………?」



あ、よくわかってないな。
その説明は、追々していこう。
今は千夏を、休ませてあげたかった。



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