5
 

ぽん、ぽん、と千夏の背中を優しく叩いた。
びく、と震えていた千夏も、だんだん身体がほぐれていく。



「あいしてる、ちなつ、」
「……?」



何度呟いても、首を傾げるばかり。

きっと、千夏は知らない。
それを知ってて、俺は言う。



「あいしてるよ、」



いつか届く日がくることを願って。



白い部屋に、二人っきり。
いつか、色を与えたいと。
たくさん、愛してあげたいと。
願って、願って、願って。
いつから、こんな感情を知ったんだろう。
愛しい、なんて。

誰でも良かったはずだった。
自分だけヨければ、それでいい。
快楽に溺れて、何も見ようとしなかった。



(いろ、が)



色が、ついた気がした。
俺の世界に、たった一つの千夏が。
確かに、変わった。



「ゆ、じ」
「うん、」
「あいして、る?」
「……うん」
「わか、ない」



しゅんとした顔の千夏を、ぎゅっと抱き締めた。



「こういうこと」
「あいし、てる」
「ん」
「ゆじ、が、ぎゅうってするの、好き……だから、」



か細い、声だった。



「あいしてる、」



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