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side.千夏
気がついたら、ゆうじがいた。
怖かった。
いや、だった。
ぼくは、前みたいに、なにかを待っていた。
ごしゅじんさまを、待っていた。
気づいたら、待っていた。
見られたくなかった。
きたないって思われるから。
知られたくなかった。
けいべつ、されるから。
「も、っ……もう、やだ……」
なんで、
なんでなんでなんで?
なんでぼくは、こんなにきたないの?
「……出よう」
ぽつり、ゆうじが何か言った。
「ここから、出よ。俺の家、おいで」
「い、え」
「うん。そこで、一緒に暮らそう」
いっしょ?
くらす?
わからない。
だっておうちは、こわいところだから。
閉じ込められるところだから。
なにかされるところだから。
「だめ、」
「え……?」
「ぼく、やだ、見せたくない」
おうちは、あれをするところでしょう。
痛いこと、するところでしょう。
ゆうじになら、なにをされてもいいけど。
きたないぼくの姿は、見せたくない。
ぽつりぽつり、と言うと。
背中をなでられて。
ぎゅうってされてて。
「きたなくなんか、ない」
「っ、」
「あいしてる」
あい、してる?
それは、なんていみ?
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