1
 

side.千夏



僕は、白しか知らなかった。

白いへやに、いた。
冷たい床に寝ころんで、ちいさな窓を、見上げていた。

白いへやのなかで、窓のそとだけ、色があった。
あお、あか、くろ。
ずっと、眺めていた。



長い間、寝ころんですごした。
足は、重いからうごかすのがいや。
うでも、同じ。
じゃらじゃらなる音が、うるさいから。



ごはんのときだけ、僕は起き上がらされる。
窓のそとが黒になると、ドアが開く。
スープが置かれて、また一人になる。
いぬみたいに、食べる。
僕に自由はないから。
手をうごかすのでさえ、許されない。



黒の時間いがいでドアが開くのは、ちがうおうちに行かなきゃいけないとき。
うでと足のじゃらじゃらが外されて、僕は待つ。
でもそこに、自由はない。



待っているのは、地獄。



白いへや。
寝ころんで、耳をゆかにつける。
目の前にある、みにくい、手首。
触れるとそこは、とくとく、音がする。



はやく、止まればいい。
五月蝿い。



傷つけても、止まらない。
僕には自由がないから。

死ぬことさえも、許されない。



前へ top 次へ

 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -