3
小さい茶碗の3分の1くらい食べたところで、千夏の食べるペースが落ちた。
ご飯を食べさせ始めたとはいえ、今までまともに食べたことがないため、胃がかなり小さくなっているらしい。
おかゆという存在も、スプーンの使い方も、知らなかった。
「お腹、いっぱいになっちゃった?」
「っ………」
茶碗を机に置こうとすると、その腕を掴まれた。
え、と千夏を見ると、俯いたままふるふると首を振った。
「たべっ……食べ、ます」
「でも、」
「うー……っ」
「お腹いっぱいになったなら、無理しなくていいんだよ?」
「っ……し、てない、」
そう言って、手に力が籠もった。
そこまで言われてしまうと、俺には拒否できないわけで。
「……じゃあ、もちょっとね?」
「……ん……」
頭を撫でて、おかゆを掬った。
結局、千夏は吐いてしまった。
「ごめ、なさっ……」
「いいよ、苦しかったね」
「う、ぇ……っけほ、っ」
ごめんなさい、ごめんなさい、と言いながら。
俺は苦しそうな小さな背中を、擦ってあげることしかできなかった。
顔色はそう良くなく、大人しくベッドに寝かせた。
千夏は、ぽろぽろ涙を流した。
少しでも、こんな表情は、させたくなかったのに。
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