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静かに、屋上のドアを開けた。
想像以上に暖かい日差しが降り注いで、思わず目を瞑った。
しかし風は冷たく、目を細めたまま姿を探す。
「………」
休日の昼間。
屋上には白いシーツが干され、風ではためいていた。
かきわけるように前に進んで、いつもの場所へ。
(………寝てる、)
屋上の、端っこ。
持ち込んだパイプ椅子に座って、暖かな日差しにうとうとしてしまったのか、千夏が踞って眠っていた。
(……いい顔してる)
少し前は苦しそうに眉間に皺を寄せていた。
今は安心したような、柔らかな表情をしている。
上着を肩にかけてやり、眠らせたまま横抱きにした。
そろそろ部屋に戻ろう。
「………う……?」
ベッドに下ろしたとき、ようやく千夏が目を覚ました。
「おはよ」
「……ゆ、じ……?」
「ん、」
言うと、きゅっと抱きつかれる。
「おかえり……」
「ん、」
優しい、声だった。
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