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「法的には……お前の弟になる」



母親を幼い頃に亡くし、一人っこだった俺にとって、父親以外の初めての家族。
……そんな喜ばしいことではないのは、すぐにわかった。



「未だに人身売買が行われているのは、裕二、お前も知っているな」



寮生活をしていた俺は、突然父親に引き戻され、実家暮らしを余儀なくされた。
距離はそう遠くないが、父親が医者で実家も病院なため、家にはいつも誰もいない。
俺が寮を選んだのは、当然の結果だった。



「先日、一つの大きな組織が捕まった。そこで保護されたのが―――この子だ」



病院の個室で出会ったのは、痛々しい姿の少年。



「身体的な怪我もあるが、精神的な治療も必要になる。施設に預けるのは気兼ねしてな、引き取った」



人身売買グループの壊滅は、ニュースにもなった。
そういった組織の壊滅を狙う委員会に、父親が参加しているのも知っていた。

けれど実際に、被害者を見るのははじめてだった。



「私は仕事もある。お前にも学校はあるだろうが……この子の面倒を、見てやって欲しい」



拒否することは、この小さな少年を、否定することに思えた。



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