6
「一人で、歩けたんだね」
「……ん……」
申し訳なさそうに、しなくていいのに。
「すごいよ、よく頑張ったね」
「……え……?」
「えらいえらい」
頭を撫でて褒めた。
ぽかん、としている千夏の顔が愛おしくて、思わず頬にキスをした。
「なに、なん、っ……」
「一人で歩けたの、えらいよ。ただ、心配しちゃうから、次どこか行きたい時は一緒に行こうね」
「……おこ、らないの……?」
「怒らないよ。千夏のこと、好きだから」
じわ、と千夏の目に涙が浮かんで、頬に零れるそれを指で拭った。
「好き。大好きだよ。どこにも行ったりしないで」
「行かなっ……いかない、ゆうじ、っ……ぼく、」
「ん?」
ぎゅうっと力一杯抱き締められた。
「すき、すきっ……ゆうじぃ…」
「……ん」
「会いたかった……っ」
「うん」
小さなぬくもりを、もう一人にしないと、心に誓いながら。
華奢な身体を、そっと、抱き締め返した。
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