5
階段から、震えた声は聞こえた。
かけのぼったら、小さな身体がそこにあって。
寒いのか身体を庇うように蹲って、泣きながら俺の名前を呼んでいた。
「ちなっ……」
「……ゆ、じ…?」
「こんな、冷たくなって……っ」
咄嗟に抱き締めた身体はすっかり冷えていて、俺の上着をかけて、暖めるように背中を擦った。
「寒かったよな、怖かったよなっ……」
「ゆうじ、」
「ごめんな、一人にして……」
ぎゅう、と抱き締めた。
段々暖かさが戻ってくる。
「誰かっ……誰かに、ここに」
「ちが、っ……ちが、あ、ぼく、」
「……?」
千夏が慌てている。
「ぼく、見たい、かった……そら、っ」
「え……?」
「歩いて、でも、見えなかっ……」
「一人で、歩いてきた?」
腕の中で、小さく頷いた。
「ごめん、なさいっ……かって、わがままして、」
「………」
「やだっ……いらないって、言わ、ないでっ……」
ぎゅっと服を掴まれた。
言うわけ、ないのに。
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