1
side.千夏
僕は、歩けるようになった。
少しだけ、少しずつ。
歩くと、笑ってくれるから。
ゆうじが、笑ってくれるから。
「………あ」
僕は、目を覚ました。
時間は読めないから、よくわからない。
窓の外は、暗くて。
「………そら、」
あの日、ゆうじと一緒に見た、そら。
また、見たくなった。
ぺたり、と足が冷たい床についた。
壁伝いに歩いて、お部屋を出る。
上手に歩けないけど。
一人でも歩けるの。
ゆうじ、褒めて。
「はっ……はあ、っ」
お部屋を出て、壁を伝って。
うえに続く、みち。
ここを昇ったら、そらがある。
「ん……っ」
早く、そら、見たい。
きらきらが、なくならないうちに。
前へ top 次へ