5
 

混乱し始めた千夏を、胸に押しつけた。
頭を撫でて、慰めるように頬にキスをした。
小さな耳に唇をよせて、安心させてやるように、言葉を紡ぐ。



「千夏はもう、奴隷、じゃない」
「っ………捨て、」
「捨てないよ。誰にも売らないし、渡さない」
「………?」



華奢な背中を撫でた。
震える千夏の手が、俺の背中に伸びた。



「俺は千夏と、ずっと一緒にいる。千夏は俺に、なんでも言っていいんだよ」
「なん、でも……?」
「俺は千夏の主人じゃないし、千夏も奴隷じゃない。千夏も普通みたいに、普通に、色んなことしていいの。誰も怒らないよ」
「ふつう、」
「そう。千夏にも、資格があるの」



言うと、千夏はポロポロと涙をこぼした。



「ゆ、じっ……ゆう、じ、っ」
「ん」
「ぼくは、ここに、いていい……っ?」



擦れた、微かな、問いだった。



「うん」



いつまでも、と、ぬくもりを強く抱き締めた。



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