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side.千夏
僕は、わからない。
どうして、歩くの。
歩いてもいいの。
我が儘言っていいの。
僕に、優しいの。
僕の、傍にいてくれるの。
「わか、ない……」
「ん?何がわからない?」
どうしてそうやって、笑ってくれるの?
「ぼく、望んじゃ、いけない」
「………?」
「ぼくは、だめ、だから」
「駄目なんかじゃ、」
「しかく、が、ない」
自分で言って、涙が出た。
―――これでお前は逃げられない。
―――お前に、幸せになる資格はないよ。
―――ずっと、ここにいるんだ。
―――死ぬまで、奴隷として、
じゃらじゃら、
鎖が耳の奥で響く。
「や、あ、あーっ……!」
耳を塞ごうとしたのに。
包まれたのは、優しいぬくもり。
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