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「千夏はここから逃げたいの?」



途端、びくりと震えた。



「ごめ、なさ、逃げないっ……逃げない、から……痛いの、やっ……」
「……!」



頭を抱えて、怯えてしまう。
慌てて言葉を紡いだ。
本当は抱き締めてあげたいところだけど、今近付くと更に怯えてしまうのは目に見えていた。



「ううん、何もしないよ。痛くないよ」
「やっ、やぁ……っ」
「千夏は、俺と一緒にいたくないのかなって、思っただけだよ」



ゆっくり、優しく言ってやると、赤い目がじっと見つめてきた。
懇願するような、目だった。



「あ、あ……っ」
「いいよ、自分が思ったこと言って。俺には我が儘言ってもいいよ」



怒らないからね、と後押しすると、一生懸命に言葉を紡いだ。



「あ、いる、一緒、いたいーっ……」
「うん」
「いかないで、っ……一緒、いる……っ」



おずおずと、こちらの様子を伺うように手を伸ばしてきた。
そっと千夏のベッドに座ると、きゅ、と裾を掴まれた。
頭を優しく抱き抱えて、震える身体を擦った。



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