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「……あら、裕二くん。おかえりなさい」
「山崎さん。……ただいま」
いつものように、千夏の病室にむかっていた。
ドアを目の前にしたとき、見知った看護師に声をかけられた。
千夏の担当の、山崎さん。
ちょっと恥ずかしくなりながら、返事をした。
「毎日えらいわね」
「いや……千夏、どうですか」
「怪我自体は大丈夫。もう少し免疫力と……あと精神面のカバーができたら、足のリハビリにでもって思ってるわ」
山崎さんは長年この仕事についてる。
親父も一任してるのがわかるし、きっと山崎さんがいるなら大丈夫だ。
「……そう、ですか」
「大丈夫よ、私もついてるから」
そんな心配そうな顔しない!と背中をばしばし叩かれた。
……母親がいたらこんな感じだったのかな、とふと思う。
「ごめんね、呼び止めて。早く行ってあげて」
「………はい」
千夏もきっと、山崎さんに心を開いてくれるはず。
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