5
side.千夏
ゆうじのにおいは、あんしんする。
「眠れる?」
「………」
恐る恐る、首を横に振った。
「怖い?」
「ん……」
「俺がいるよ」
頭を抱えられて、ゆうじの、鼓動が目の前にある。
「目、瞑って。ゆっくり、深呼吸して」
「ん………」
ゆうじの匂いを、吸い込んだ。
甘いような、暖かい、
「ゆ、じ……」
ゆるく頭を撫でてくれる大きな手が、優しい。
ゆうじがいなくならないように片手を握った。
握り返してくれる手が、あったかい。
ずっとこのまま、いられたらいいのに。
「……ん……」
「おやすみ……」
もう怖い夢は、見なかった。
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