3
「う……」
気が付いたら、眠っていたらしい。
僅かな違和感に、目が覚めた。
布団が引っ張られる感覚。
ちらりとそちらを見ると、暗闇の中で千夏が、こっちのベッドによじ登ろうとしていて。
「……千夏?」
「は、わっ……」
びっくりしたのか、ずるりと床に落ちてしまった。
身体を起こして見ると、ぺたりと床に座っている。
どうしたもんかと思っていたら、
「あ、あーっ……」
「!」
両腕を、伸ばしてきた。
そっと背中に手を回して、軽い身体を抱き上げた。
「どしたの、眠れない?」
「ん、んっ、」
骨の浮かぶ背中を撫でた。
千夏から触れてきたのは、初めてに近かった。
カタカタ震えて、その身体は、ひどく冷たい。
「ごめ、なさ……っ」
「え?」
「ごしゅっ……ぼく、どれい、なのに……っ」
そういって、手を突っぱねられた。
けれど、裾をつかむ手は、離れない。
そんなに。
まるで世界に、俺だけしかいないみたいに。
そんなに、縋らないで。
「俺がいたら、眠れない?」
「ちが、っ……ちがう、」
否定するように、ぎゅう、と背中に腕が回された。
「あんしん、する……」
「っ……」
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