1
「ん、あっ……!」
空き教室で聞こえる嬌声は、俺の目の前のおとこのもの。
「はや、くっ……したっ、さわって……」
「もう我慢できないの?」
この男は俺のご用達。
呼んでは抱き、金を払う。
この学校では売りをしてるやつも、それを買うやつも、珍しくはない。
「んっ……んん、っあ!」
望み通り下を扱ってやり、するりと後ろに指を回して、
「………」
何か、引っ掛かった。
「ゆう、じ……?」
「………ごめん」
「えっ」
引っ掛かって、思い出して、気分が削がれた。
落ちた制服を拾って肩にかけてやり、いつもの金を机に置いて、振り返らず教室を出た。
当たり前の事だった。
遊びでいろんなやつを抱いた。
自分が気持ち良ければ、それでよかった。
「………くそ」
一瞬だけ、ちらついた。
千夏の、涙。
前へ top 次へ