3
side.千夏
「たすっ……け、……たすけ、て」
この部屋は、駄目。
逃げなくちゃ、早く、
ドアの向こうは、あの男がいる。
「っ!」
窓が目に入った。
腕だけで身体を引きずって、窓に手を伸ばした。
それには、届かない。
「あーっ……あっ、あぅ、」
茜色の空。
その向こうに、行きたいのに。
僕は、
死ぬことさえ、
許されることはない―――?
「ふぇ、っ……あ、あぁ、っ」
力の限り、腕を伸ばした。
それは空には届かず、壁を引っ掻いた。
「やぁっ、ぁ、」
がりがり、爪が鳴る。
壁を叩いて、自分の無力さを恨んだ。
「ふ、ぅ……っえ」
白い壁に、赤い色。
僕の肌に、赤い色。
腕に巻かれた包帯を、ぐちゃぐちゃに解く。
すべて流れてしまえばいいと、傷に傷を重ねた。
「あ、ぁっ、」
どうか、
もうこれ以上、
ドアが、開いた。
―――新しいご主人様が、
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