2
 

side.千夏



―――お前は売られたんだ。



耳を塞いでも、その声は流れ込む。



―――ひどい親だな、子どもより金だとよ。



やめて、



――この顔は売れる。
―――親に感謝するんだな。

―――いや、恨むべきか?



聞きたくない、



―――何のために、生まれてきた?



「っ―――!」



反射的に飛び起きて、咄嗟についた手がシーツをすべり落ちた。
そのまま身体がかくんと倒れて鈍い痛みがし、ベッドから落ちたのだと理解する。



「はぁっ、あ、ぁっ……」



夢。

でもそこにあるのは、明らかな現実。
昔見た、現実。



「いやっ、ぁっ……!」



真っ白な部屋。
静寂しかない部屋。

そこは、似ていた。
僕が嫌いな場所に似ていた。

ゆっくり、ドアが開いて。
にやついた笑みを貼りつけた男が近づいてきて。
僕を部屋から連れ出す。



―――新しいご主人様が見付かったよ。



前へ top 次へ

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -