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side.千夏
―――お前は売られたんだ。
耳を塞いでも、その声は流れ込む。
―――ひどい親だな、子どもより金だとよ。
やめて、
――この顔は売れる。
―――親に感謝するんだな。
―――いや、恨むべきか?
聞きたくない、
―――何のために、生まれてきた?
「っ―――!」
反射的に飛び起きて、咄嗟についた手がシーツをすべり落ちた。
そのまま身体がかくんと倒れて鈍い痛みがし、ベッドから落ちたのだと理解する。
「はぁっ、あ、ぁっ……」
夢。
でもそこにあるのは、明らかな現実。
昔見た、現実。
「いやっ、ぁっ……!」
真っ白な部屋。
静寂しかない部屋。
そこは、似ていた。
僕が嫌いな場所に似ていた。
ゆっくり、ドアが開いて。
にやついた笑みを貼りつけた男が近づいてきて。
僕を部屋から連れ出す。
―――新しいご主人様が見付かったよ。
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