3
 

「千夏……?」



さっきまでの様子が嘘みたいに、きゅっとシャツにしがみついていた。
深く息をして、ふと顔を上げた千夏と目が合った。



「あ、っ……」
「わわ、ごめんね」



目が恐怖で揺れたのを見逃さず、手が離れた隙に距離をおいた。
さっきよりは近い、ベッドから数歩離れたところ。

ぎゅっとシーツをしがみついて、目に涙を浮かべた。



「怖いこと、しないからね……」
「ひ、ぅっ……」
「もう、怖いことはないよ……」



落ち着かせるように、語り掛けた。
一瞬だけ見えた落ち着きに、何かつかめそうになったのに。



身体中の傷。
歩けない脚。
叫びしか出ない声。
笑うことのない表情。
恐ろしい程細い身体。

びっくりするほど綺麗な顔が、いつか、やわらぐ日がくるのだろうか。



「俺、裕二。羽鳥裕二って言うんだ」
「っ……」
「よろしくね、千夏」



いつか、呼んでくれる日が。



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