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side.千夏



長い長い、夢を見ていた気がする。

夢の中身は覚えていないけれど、左手が、温かかった。
優しい声と、安心する、匂い。

ずっと目覚めなければいいと思った。
心地よい夢が終わらないように。



『―――千夏、』



目を覚ましたら、地獄だとわかっていた。
色んな人の家に行って、新しいご主人様に仕える。
泣いても喚いても、終わらない。

僕は、売られた、から。
僕は、買われた、から。



目を覚ました先に、白い部屋が見えた。
知らない人が、見えた。
いつものご主人様より、随分若い人だった。

たくさん人がきて、また、始まると思った。
このまま死ねればいいのにと、思った。

腕がちくりとして、急に眠気が襲ってきた。
重い瞼の隙間から見えたのは、



『―――千夏、』



さっきの、人。

夢の中と同じ声。
夢の中と同じ、匂いがした。



―――暗転。



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