1
side.航
帰り際に保健室を覗くと、保健医不在の札がかけられていた。
仕方なく帰ろうとしたとき、廊下で奈津が歩いているのが見えた。
(ふらついてる)
(大丈夫かよ、)
見つからないように距離を置いて後ろを歩いていると、奈津が倒れた。
「っ……!」
思わず駆け寄って、抱き起こした。
簡単に俺の腕に収まった奈津は小さくて――ひどく、軽くて。
「……こ、う、?」
長い間聞けなかった、俺を呼ぶ声。
心が、揺らいだ。
保健室は開いていないから、仕方なく俺の部屋に運んだ。
ベッドに下ろして、満月先生に電話しようと離れようとすると、くいっと引かれた。
無意識だろう、眠る奈津が俺のシャツを掴んでいた。
「ごめんな……」
大切な、愛おしい、子。
前へ top 次へ