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side.満月



「俺……しばらくは奈津と会わない」



あの日、そう高梨は言った。



「……どうしてです?」
「距離置かねえと……俺、何するかわかんねえんだ。もう奈津のこと、傷つけたくない……っ」
「………」



奈津を傷つけた罪悪感を背負うために、奈津から離れようとするのだろう。
そうやって―――奈津を忘れようとしているのだろう。



「先生、言ったよな俺に。それでも奈津を好きでいれるかって」
「言いましたね」
「好きだよ。好きだけど、やっぱり先生の言った通りだ。俺には重すぎる」



高梨も、奈津と同じ歳。
同じ苦しみをとはいかずとも、共に苦しみを分かち合うには、まだ若すぎるのかもしれない。



「奈津は……悲しむかもしれませんね」
「悲しまねぇよ。先生のときは不安定になるくらい悲しんでたけど」



自嘲ともとれる笑み。
止めることもできたけれど、高梨の決意と思いは、一番に尊重すべきかと思った。



「わかりました。……ただ、奈津が責任を感じては行けないので『会わない』ではなく『会えない』という体で話をつけます。生徒会が忙しいとか」
「………ありがとう、ございます」
「気が向いたら、覗きにでも来て下さい。昼間だと奈津は大体寝てるので」
「………」



高梨は最後まで、返事をしなかった。



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