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あんな事があってから数日。
あの日以来、僕は航には会っていない。
「実は彼、生徒会にも所属してましてね。もうすぐある総会の準備やらで、忙しいようですよ」
「……そう」
僕はいつもと変わらぬ生活。
航と出会う前の、満月先生との2人だけの世界。
実際、航に会ったらどんな反応をしていいのかわからないというのが本音だった。
だから今、航が忙しい状況にあるというのは、丁度良いかもしれない。
「ま、あいつ今までさぼり気味だったしな」
「……皆川先生も、堂々とさぼるの止めて頂けます?」
代わりと言ってはあれだけど。
最近は皆川先生が来るようになっていた。
皆川先生は僕と航のクラス担任で、満月先生とは同級生だったらしくて、すごく仲が良い。
僕も満月先生ほどとは言えないけれど、少しながら話すことが出来てきた。
「そういえば浅井、お前最近痩せた?」
「話そらすなっ」
「そう、ですか……?」
「お前ほっそいんだから、ちゃんと食わねえと駄目だぞ?」
そして皆川先生は、授業があると言って保健室から出ていった。
「ったく、あのエセ教師」
満月先生が舌打ちした。
少しだけ、嬉しそうに見えるのは、気のせいだろうか。
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