3
side.満月
高梨から連絡があったとき、奈津はぐったりとした様子でベッドに眠っていた。
過呼吸を起こし、嘔吐までしたのだという。
高梨が、手を出してから。
「そう。奈津にそんな事を」
「っ……」
事情はすべて聞いた。
すっかり夜遅くになっていた。
奈津が夜中に起きてもいいように、車で俺の家まで運んだ。
高梨も、一緒に。
「高梨?」
「………」
咎めているつもりはなかったが、高梨は泣き出しそうな顔をしていた。
「君は奈津のことが、」
「……俺は奈津のこと、好きになる資格なんてない」
絞りだすような声だった。
「最低なことしたって、わかってる。でも俺は……っ」
震える高梨の頭を、そっと撫でた。
「俺は奈津が……っ」
「………君は似てますねえ」
―――恭平に。
前へ top 次へ