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side.航
「ごめん、奈津、ごめんな」
「ひっ……はなし、て、っ」
「ごめん。……傷つけてごめん、」
「やっ……おと、さ」
混乱したままの奈津を、構わず抱き締めた。
ただ、謝り続けた。
奈津の傷を抉って、痛みを思い出させた。
――馬鹿だ、俺。
「おと、さ」
「お父さんは、もういない」
「っ……え、」
「俺は航だよ」
「こ、……う?」
身体を離すと、涙で顔がぐしゃぐしゃな奈津と目が合った。
奈津がそっと、俺の頬に手を添えた。
確かめるように頬を撫でて、ゆっくり目を閉じた。
再び開けた奈津の目の中には、俺の姿が映っていて、
「……こう?」
はっきりと、名前を呼んだ。
「ごめんっ……ごめんな、俺、」
「え……?こ、う」
「ごめんな……っ」
いつからか俺の姿が、父親の姿と重なっていたのだろう。
それくらい、俺は最悪で、奈津を傷つけた父親と、同じことをしたんだ。
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