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満月先生が、帰ってきた。
すごく嬉しかった。
「ただいま」と言われて。
満月先生が帰ってくる場所が、僕がいる場所で。
それがただ、嬉しかった。
「奈津、帰ろ」
「……ん、」
いつものように保健室でのんびりしていると、航がソファから立ち上がった。
……いつもより、少し早い時間。
「また、明日会いましょう」
「……さようなら、先生」
「さようなら」
先生と別れるのは名残惜しかった。
きっとここ数日会っていなかったから、足りないんだ。
にこりと笑った先生から送り出され、僕は航から手を引かれて保健室を出た。
………ええと。
「こ、う?」
「ん?」
「……怒ってる……?」
「え?」
ふと航が立ち止まった。
いつもより手を強く握られていて、「あ、ごめん」と力を緩められた。
「怒ってないよ。奈津を怒る理由、ないだろ?」
「…………」
航が優しく言って、頭を撫でてくれた。
そう言っているけれど、航、何かが違う。
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