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side.航
夜、電話がかかってきた。
満月先生だった。
『奈津が、君の前で?』
「…はい」
『そっか。笑えたんだ』
電話の向こうで、ほっとした声が聞こえた。
明日から満月先生は、出張に行ってしまうらしい。
何かあれば宜しく、と。
そういった電話だった。
『高梨だったら、大丈夫かもしれないね』
「え?」
『奈津のこと。君にすっかり懐いているでしょう?』
「懐いてる、なんて。奈津にとっては先生が、」
『もう奈津はね。私がいなくても大丈夫です。……君がいるからね』
くすくすと、先生は笑った。
『妬けますねえ。まあ、奈津が幸せなら、それでいいんですけどね』
「先生、何言って」
『というわけで。明日からは宜しく頼みますよ』
……一方的に切られた。
先生が言っているように、奈津が俺を一番頼って、一番そばにいて欲しい人だと思ってくれているなら、これより嬉しいことはない。
でも。
奈津の真意はわからない。
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