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side.満月



俺は知っていた。

保護される前から、自らのストレスが溜まると、自傷癖に走ることを。
左腕にはすでに、無数の引っ掻き傷や切り傷があった。

それと、奈津が今まで言われ続けてきた事も。



『何だ、この傷。自分でやったのか?―――汚い』
『お前には、こうする事しか、能がないんだよ』



逃げても尚、追い掛けるのは父親の影。

俺はそっと、奈津を抱き締めた。
抱き締められ慣れていない奈津は、びくりと身体をちぢこませた。



「もう、いいんですよ」
「っ、え……?」
「奈津は綺麗ですよ」
「っ……」
「自分でそんな事言っちゃ、いけませんよ」



弱いこの子に付けられた、傷は余りに大きすぎる。



「もう、苦しまなくて、いいんですよ」



誰か、この子を、助けて、



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