6
side.満月
月灯りが綺麗な夜。
1つしかないベッドを奈津に渡し、ソファに眠っていた俺を起こしたのは、啜り泣く声だった。
「……奈津?」
そっと寝室を開けると、窓から差す月光で、辛うじて奈津が泣いているのが見えた。
「どうしました?奈津、」
「ふ、ぅっ……く、っ」
近寄れる距離ぎりぎりまで寄って、話し掛けた。
ベッドに座り込んだまま、奈津は泣きじゃくっていた。
初めて、奈津が感情を顕にしたことに、俺は少なからず動揺した。
―――そして。
「な、つ、?」
「っ……お、願い、」
「え?」
「僕を、抱いてください……っ」
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