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side.満月
奈津を引き取るのは、一番近い親族で、若かった俺にとっては容易い決断だった。
怯えた目をした奈津がうちにやってきたとき、それはひどいもんだった。
入院していたときから顔を合わせてはいたものの、家に連れて帰っても手が届く距離に近付くことが出来なかった。
それでもいつか心を開いてくれるだろうと、焦らずに奈津の回復を待つことにした。
俺からは必要以上に話しかけないようにしたし、近付かなかった。
奈津のほうから近付いてくれるまで、ひたすら待っていた。
そして、ある時。
奈津と俺の距離が一気に近まった。
月灯りが綺麗な――――あの夜。
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