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side.航
奈津はこうやって不安定になると、普段の無口で無愛想な様子からは想像出来ないくらい、弱々しくなる。
「こお、こわっ……」
「ん、ここにいるよ」
「ちが、」
腕の力が、強くなった。
「こう、も……っいつか」
「え?」
「ぼくをおいて、」
どこかに、いってしまうの?
消えそうなほど、小さな声。
幼い時に唯一愛情をくれた、母親を失った傷。
唯一の父親から虐げられ、愛情を知らないまま。
目の前に向けられる満月先生や――俺からの好意でさえも、疑わずにはいられない、そんな傷。
自分がこれ以上傷付かないように、それ以上に誰かを傷付けないように、信じることをやめた。
そんな孤独と、一人で、闘い続けた――?
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