6
 

side.航



「ちょっと、ごめんな」


人に見られるのはまずいと思い、くたっとした奈津をそっと抱えてドアを閉めた。
気力もないのか、奈津は嫌がらなかった。
ぞっとするくらい、軽かった。
奈津はただ目を瞑り、荒い息を繰り返していた。


「ごめんな、部屋ん中入るな」


返事はなかったけれど、部屋に上がり込んだ。

ひどく殺風景な部屋だった。
必要最小限の物しか置かれていなかった。
部屋の奥にはベッドがあり、驚かせないようにゆっくりと降ろして、


「な、つ……?」
「………」


動けなかった。
縋り付くかのように、細い腕が、俺の首に巻き付いていた。

ぎゅっと、力が込められる。


「こう、っ……こ、」
「奈津?」
「こわっ……怖い、」
「何が、怖い?」


いつもとは違う、甘えたような、舌っ足らずな声。
壊れてしまわないように、そっと背中に手を回して、抱き締めてやった。

ここにいるよ、と。
そばにいるよ、と。
教えてやるように。



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