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side.航



「……何やってんだ、俺は」



ずるりとドアを背にして、その場に座り込んだ。

奈津のことが好きか嫌いかと言われたら、はっきりと好きだと言えた。
けれど、満月先生が奈津を愛おしそうに見る目と同じように、自分が見ているとは思っていなかった。

奈津の過去を知れど、奈津を同情の目で見るつもりはなかった。
ただ助けになれればいいなと。
ただ仲良くなれればいいなと、思っていた。



「なんなんだよ……」



奈津を簡単に『好き』と言うのは、あまりに重すぎた。
気付かない振りをして、気付かない事にした。

あの日、奈津の過去を知った日、奈津が背負う物の大きさを思い知らされた。
満月先生の覚悟の強さも、思い知らされた。

自分には無理だと思った。
まだ高校生のガキに、何も出来ないと思った。

でも、



(……無理だ)



前よりも緩んだ頬だったり。
少し増えた会話だったり。
さり気ない気遣いだったり。

気付かない振りをして、気付かない事にした。

でも、無理だった。



「……好き、なんだよなあ」



一人ごちて。



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