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部屋に着いた。
航と僕の部屋は、廊下を挟んで向かい側だ。
「それじゃな」
航が柔らかく笑って、手を軽く振る。
「まっ……」
「え?」
「あの……」
ドアノブに手をかけた状態で、航が固まっている。
「あの、」
「ん?どした?」
「あ、ありが、とう。……いつも」
なんて顔していいかわからなくて、頭を上げられなかった。
航からの、返事は、なかった。
段々と不安になって、ぎゅっと瞑っていた目を開け、そろそろと顔を上げて、
「こ、……っ!」
近距離に、航の顔。
一瞬だけ目があって、航が距離をおいた。
「……ごめ、」
「………」
「また、明日な」
気まずそうに言って、部屋に入って行った。
廊下に一人になった僕も部屋に入り、その場に座り込んだ。
(なに、今の)
でも、
(嫌じゃ、なかった)
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