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僕と高梨が出会ってから、1ヶ月くらい経っただろうか。
高梨が僕を名前で呼ぶように、僕が高梨を名前で呼ぶようになるには、十分な期間だった。



(、暑)



もうすぐ、夏がやってくる。



「奈津、大丈夫?」
「……へーき」



寮までの帰り道。

最近の僕は調子が良くて、学校が終わる前に帰ることが少なくなっていた。
相変わらず人前に1人でいるのは怖いから、こうして航と帰っているわけだけど。

満月先生は学校が終わってからだと会議やらで忙しいから、航が送ってくれるんだ。



(ありがたい、けど)
(……申し訳ない)



たった一人で、帰ることさえ、ままならない。
ぎゅっと、拳を握った。



「奈津?」
「……なんでも、ない」



(、だったら)



せめて、言葉だけでも。



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