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僕が2歳のとき、母親が死んだ。

元々は身体が弱い人だったらしい。
風邪を引いて肺炎を拗らせ、あっという間に死んだ。

僕と母親の記憶は、ほとんどなかった。





父親と二人暮しになって。
保育園にさえ行かせてもらえなかった。

後から聞いた話によると、戸籍も作られていなかったらしい。

親戚と絶縁状態で、僕の存在は小さな家の中でしか認められていなかった。



周りの世界なんて知らなかったし、学校なんてものもわからなかった。
僕の世界は家の中だけで、主人公は父親だけだった。



――生まれてからずっと、僕は父親の為に生きてきた。



家の外に出るのは許されなかったが、家事全般をこなした。

普段は優しい父親だったが、家事を失敗したときや苛立っているとき―――夜の情事のときは、怖かった。
暴力さえ当たり前にあった。



僕が一番嫌いな仕事は夜の情事。
当たり前のように毎日訪れる痛みに僕が嫌がると、暴力を与えながらも父親は悦んだ。



父親しかしらない僕にとっては、当たり前の行為だった。



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