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「……そういえば」
昼休み。
デスクで書類整理をしていた先生が呟いた。
「どしたの」
僕の向かい側のソファに座る、高梨が顔を上げる。
「奈津の寮のお部屋、311なんですよ」
「……?」
だから、何、と心中で呟く。
「あ、そうなんだ」
高梨が驚いた顔をして、優しい笑顔を僕に向ける。
一番、好きな顔。
「俺の部屋、313。お向かいさんなのな」
「………」
何も言わない僕を気にしていない体で、高梨は机に置かれた紅茶を飲んだ。
僕があまり口数が多くないことで、機嫌を悪くする人だっている。
高梨はどうやらあまり気にしないタイプのようで、それが僕が高梨を容認する一つの理由にもなった。
(お向かいさん)
(気が付かなかった)
学校が始まってから登校し、学校が終わる前に下校するため、生徒にあうことは少ない。
気付かなかったのは当たり前かもしれない。
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