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side.満月
「……ね、せんせ」
「はい?」
「その……浅井って」
高梨が口を濁す。
言いたい事は十分わかる。
「これは個人の事だから、詳しく言えないのですが」
すっかり冷めているコーヒーを勧める。
「奈津は、普通に生きて行くにはあまりに重い物を抱えすぎています」
「………」
「だから自分を傷付けたり、上手くコントロール出来なくなる」
カーテンの向こうに眠る奈津を、そっと思う。
「だから、少しでも普通に生きて行けるように、高梨も協力してくれますか?」
これは嫉妬とかは抜きにして、本心だった。
同じクラス、しかも奈津の秘密を不本意ながら知ってしまい、しかし拒絶せずに受け入れた高梨。
彼なら奈津の友達になれると思った。
こうやって一人ずつでいいから、色んな人との関わりを持って欲しいと思った。
「俺は、全然いいよ。浅井と仲良くなりたいし」
「……ありがとう」
奈津を一人にしてしまい、闇の部分を他人に曝け出してしまったのは頂けないが、それが高梨で本当に良かったと思った。
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