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side.満月
「貧血による熱ですね。しばらくしたら治るでしょう」
「……よかった」
安堵したような顔。
奈津の額に熱冷ましシートを貼って、ソファに座る高梨の向かいに腰を下ろす。
「びっくりしたでしょう」
「……まあ」
「でも高梨がいてくれて助かりました。ちょっと会議で遅れてしまって」
コーヒーを啜りながら、目の前の高梨を見やった。
意識を失った奈津を介抱する間の、高梨の心配した表情が印象的で。
聞けば奈津が自傷行為をし、過呼吸さえ起こしていたとか。
今は落ち着き、高梨も制服に着替え、(授業をさぼって)こうして話をしているわけで。
にしても、少し妬ける。
奈津は私以外に人に触れられる事を嫌う。
それが一つの優越感だったのに、発作を抑えるためで、奈津も混乱していたとはいえ、触れるとは。
「せんせ?なんか怒ってる?」
「……別に」
……顔に出た。
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