1
 

side.満月



「貧血による熱ですね。しばらくしたら治るでしょう」
「……よかった」



安堵したような顔。
奈津の額に熱冷ましシートを貼って、ソファに座る高梨の向かいに腰を下ろす。



「びっくりしたでしょう」
「……まあ」
「でも高梨がいてくれて助かりました。ちょっと会議で遅れてしまって」



コーヒーを啜りながら、目の前の高梨を見やった。



意識を失った奈津を介抱する間の、高梨の心配した表情が印象的で。
聞けば奈津が自傷行為をし、過呼吸さえ起こしていたとか。

今は落ち着き、高梨も制服に着替え、(授業をさぼって)こうして話をしているわけで。

にしても、少し妬ける。
奈津は私以外に人に触れられる事を嫌う。
それが一つの優越感だったのに、発作を抑えるためで、奈津も混乱していたとはいえ、触れるとは。



「せんせ?なんか怒ってる?」
「……別に」



……顔に出た。



前へ top 次へ

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -