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気が付いたら目の前の男に抱き締められていた。
(なにが、大丈夫、だっ……)
離して欲しくて身動ぎするが、力が足りなかった。
頭を男の肩口に押さえ付けられ、背中を擦られる。
「浅井。ゆっくり、息、吸って。大丈夫」
離して欲しい反面、息苦しさは辛かった。
この苦しさから逃れたくて、男の言う事に従った。
段々と楽になってくる。
その間、男は背を撫で続けていた。
「……あれ、高梨と……奈津!?」
男の肩越に、ドアを開けたまま絶句する満月先生が見えた。
遅いよ、来るの。
そう心中で呟いて、僕は意識を手放した。
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