5
 

揺すられて目を覚ますと、目の前には知らない男がいた。

肩を捕まれている事実と、目の前に人がいる現実に、一気に恐怖が心を支配した。
咄嗟に間合いをとる。

ベッドに寝ていたはずなのに、ソファにいるのはどういうことか。
左腕に鈍痛を覚えて一瞥すると、無数の傷。



(また、やったんだ)



いつものこと。
無意識に傷をつけてしまう、自分の癖。

次いで思い出す、目の前の男の存在。
傷を見られ、触れられ、今は一部屋に二人きり。



「……大丈夫?顔色悪い」
「っ……!」



男の顔が近づき、身を固くした。



「近、づくなっ……」



ひどく、気分が悪い。
気が付くと息が苦しくて、胸元のシャツを手繰り寄せた。



「は、……はぁっ、はっ……」
「ちょっ…浅井!?」



苦しくて、死にそう。
早く来てよ満月せんせ。

息苦しさで頭がいっぱいで、喘ぐように空気を肺に取り込もうとした。
けれど、上手く息が出来ない。

こんなに苦しいなら、いっそ死ねばいいのに。




「……!?やっ……!」
「大丈夫。ゆっくり、落ち着いて、息吸って」



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