5
 

「う……」



ソファで寝るのは、身体が痛い。
節々の痛みを感じながら、俺は身体を起こした。
いつの間にか朝だ。

途端、がたんっと大きな物音がした。
ソファのそば、キッチンから。



「……おま」
「ち、近寄るなっ……」



昨日の、ガキ。
捻った足を引きずってきたのか、包帯が取れてしまっている。

どこから取ったのか包丁を俺に向けて、がたがた震えていた。
……怯えるのは俺の方だろ、この状況。



「危ねえだろ、おろせそれ」
「っ……」



足が震えてる。
痛むのだろう、カウンターに体を預けるようにして必死に立っている。
黙って逃げ出さなかったのは、そのせいか。



「大人しくしろって」
「嫌だっ」



包丁を振り回され、ぴっと手の甲が切れた。



「つっ……」
「あ、……」



一瞬だけ見えた、躊躇いの表情。



前へ top 次へ

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -