5
side.綾
「ご、ごめ……」
都築が驚いた顔をしてる。
どうして自分が都築に怯えているのか、わからなかった。
ただ、都築の行動すべてに、反応してしまう。
―――いつ、早く出て行けと、言われるかわからなくて。
「っ………」
拒絶してしまったのに、都築はまた手を伸ばしてきた。
確かめるようにそっと頬に触れられて、気付いたら腕の中に抱き込まれていた。
「嫌だっ……離せっ!」
「っ………」
これ以上、俺に関わらないで。
俺に、安心をくれないで。
ここに居たくなってしまう。
けれど暴れる俺を落ち着かせるように、都築は頭を撫でた。
「なぁ……本当は、どうしたいの」
「っ……」
息が、詰まるかと思った。
「本当のこと、言って」
言えるわけない。
「桜木」
言えるわけ、ないのに。
前へ top 次へ