3
side.綾
朝起きて、そこにあるのは明日という今日。
幸か不幸か、休日で大学もなく、俺より先に都築は起きていたようだった。
「……寝癖ついてる」
「るせ」
リビングに行くと、至って普通の様子な都築が煙草を吸っていた。
構わずソファに、膝を抱えて座った。
都築はここにいたいと言えば、別にどっちでもいい、と居させてくれる。
だから、俺の言葉を聞いても、引き止めたりしなかった。
引き止められたかった、わけじゃないけど。
本当は、出て行くなんて、言いたくなかった。
ずっとこの場所にいたかった。
けれど約束は約束だ。
生産性のない俺がここにいても、都築には何のプラスにもならない。
それに俺と都築は―――住んでる世界が違いすぎる。
過去のことは話せど、同情して欲しいわけじゃない。
見せ付けられたのは、俺の汚さだけ。
汚い俺は、都築と一緒になんか、いちゃいけない。
「……煙草、匂い平気?」
「……大丈夫」
気にしていつも、ベランダに寄って吸ってくれる。
いちいち気を遣ってくれて、でもそんなところが、俺の足を動かなくする。
じゃ、行くわ、と。
たったそれだけの事が言えなくて。
(何、やってんだよ俺)
言葉が、出ない。
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