6
 

飯食って、風呂も入って、桜木はすぐさま寝てしまった。
泣いていたし、疲れたのだろう。
ベッドに丸まっている桜木の頭を、そっと撫でた。

想像以上のものを、抱えていた。
身体中の傷も、心の傷も、消えそうにないし、消せそうにない。

ただ信頼、みたいなものが見えて。
会話も随分できるようになったし、傍にいても触れても、嫌がらなくなった。

俺は滅法、桜木には弱いようだ。
放っておけないし、どうしていいかわからないし、何より調子が狂う。
キスしたのは、愛情なのかよくわからない。
ただたまらなくなって、気付いたら、そうしていた。

桜木が嫌がらなかったのも、愛情なのかわからない。
そもそも歪んだ欲しか受けなかった桜木に、愛情がわかるのかも不明だ。



(なんだかなあ……)



他人に深く関わらない、というスタンスで生きてきたのに。
こんなに他人が気になって、心配で、何かしてやりたいと思うなんて。



「………」



いつもはソファに眠っていたが、ベッドに潜り込んだ。



「んん……」



桜木を抱くようにすると、無意識に擦り寄ってきて。
苦笑が漏れながらも、柔らかな髪を梳いてやる。



「……おやすみ」



どうか、幸せな夢を。



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