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「おい、」
「来る、やだっ……こわ、っ」



何が来ると言うのだろう。
ただ何かに怯えているのが明らかだ。
ひどい荒れ様に若干慌てつつ、とりあえず落ち着かせることを考えた。



「何も来ねぇって」
「うそ、来るっ……やだ、っ」
「嘘じゃねーよ」



顔をこちらに向けて、目を合わせた。
ぼんやりとした桜木の目には、俺がきちんととらえられていない。

カタカタと震え続ける身体と、流れ続ける涙。
痛々しいそれに、思わず俺は―――唇を重ねた。



「っ、ん……っ……!?」



はっと気付いて口を離すと、桜木と目があった。
視点が定まってきて、はっきりと、俺をとらえた。



「………都築?」
「……戻ったか」
「え?え、俺、何でこんな泣いて、」



きょとんとした様子に、混乱していてあまり記憶がないことが伺えた。
ひとまず良かったと安堵し、同時に自己嫌悪に陥る。
桜木は記憶がないだろうが、

―――何故俺はあんなことを。



「ごめ、俺、なんか変なこと……」
「ちょっと混乱してたみてーだな」
「……ごめん」



強かったしがみつく腕も離されて、俺は隣に桜木を下ろした。



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