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「都築、っ……おれ、」
「ん、落ち着け」



また泣きじゃくり始めた桜木の頭を撫でてやる。
震える細い身体が俺に必死にしがみついていて、漏れる小さな声を聞きながら、ぼんやりと考えた。

のらりくらりと生きてきた。
普通の家庭で普通に暮らし、流れのままで大学に入った。
面倒なことは嫌いだから、友人はいても深く関わることはしなかった。

こんなに自分が誰かに、必要とされるとは思わなくて。

色んな物を抱えて、心休まるところもない。
俺とは正反対な生活を送っていたのは明らかで。
何をしてやれるかはわからずとも、何かしてやりたいとは、思う。



「都築は、俺にっ……何も、しない」
「え?」
「も、やっ……嫌だ、俺はっ、したくない……のに」
「お前混乱してる」



首元に埋められたままの顔を引き上げて見ると、涙をぼろぼろ流していた。
極整な顔に不覚にも心臓が速くなりつつ、視界の定まらない桜木の涙を拭ってやる。



「嫌だった……でも、っ……逃げられ、なかっ……」
「落ち着けって」



何のことだかわからない。
ただひたすらに、何かに怯えながら言葉を吐き続けていた。



「やだ、やっ、来るっ……!」
「え」



突然、ぎゅうっと力を込めてしがみついてきた。
また顔を首元に埋めて、一層震えた。



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