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side.綾
考えだすと駄目だった。
またずるずると足を引きずって、リビングまで出た。
しんとした部屋は予想済だけれど、どうしてもそれを、今は受け入れることが出来なくて。
(都築、っ……)
玄関から出ていく背中を思い出した。
帰ってくるとわかっていても、帰ってこないかもしれないという不安が湧き起こる。
一度経験した恐れが、今と重なって身体を震えさせた。
優しい都築を、この場所を、もう離したくはなくて。
(帰って、きてよ……)
玄関先で、蹲った。
何泣いてんだろうと、馬鹿馬鹿しくなった。
ここは都築の家だ。
帰ってこないわけがない。
けれど俺はずっと、ここに居られるわけじゃない。
都築が出ていけと言えば―――この足が治れば、俺は出て行かなくちゃならない。
なるべく、長く。
できるだけ、傍に。
願うことしか、出来ないから。
「都築ぃ……っ」
俺に安心を、頂戴。
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